<オープニング>
復興の兆しが見えてきた夜那瀬の国。
国の復興に情熱を傾ける国民にとって、昼も夜も無い。ひたすら倒壊した家屋などの復旧作業に当たっている。
そんな人々の強い味方がニ八蕎麦であった。非常に安価な値段で食す事のできる屋台の蕎麦は、庶民にとってなくてはならぬ存在である。まして深夜営業もしているのはこのニ八蕎麦以外にはあまり無い。
しかし、今このニ八蕎麦で困った事が起きていた。
「深夜にある蕎麦の屋台で食事をしようとすると、とてつもなく待たされた上に、伸びきった蕎麦がだされるらしい。そしてそれに客が激怒すると、『空腹によって怒りに満ちた心』を喰らおうとして殲鬼半裂が襲い掛かるのだ。もうこのような事件が何件も続いていて、夜那瀬の者たちは皆恐怖に怯えて満足に蕎麦を食えないのだ。蕎麦の屋台を営業している者たちも蕎麦が売れなくなって困っているらしい」
迦煉はひとまず言葉を切ると、集ってもらったサムライたちの顔を見渡した。
「そこで、だ。諸君にこの半裂の始末を頼みたい。半裂は二八蕎麦の職人に化けて屋台を引いているようなので、一目では判別できないだろう。今、夜那瀬には幾つものニ八蕎麦の屋台が出ているので識別は難しいかもしれないが、何とかそれを見つけ出してもらいたい」
今、半裂の現れる夜那瀬の町は、かなり家屋や道が破壊されているので夜になると作業現場以外真っ暗になってしまう。何か証明を用意したほうが無難だろう。
「ただ。敵はそれほど強力な殲鬼ではないから、諸君らサムライの正体がバレればすぐにでも逃げ出してしまうだろう。そうならないように気をつけてもらいたい」
姫巫女の言葉を受けて、サムライたちは夜の夜那瀬の町に繰り出すのだった。果たして半裂はどこに潜んでいるのであろうか。 |
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